『鏡をみてはいけません / 田辺聖子』

鏡をみてはいけません (集英社文庫)

田辺 聖子 / 集英社

内容(「BOOK」データベースより)
朝ごはんを一緒においしく食べられる人と住みたい―。
そんな思いが叶って野百合は仕事で知り合った子持ちの律と同居をはじめるが…。
10歳の宵太の世話をやき、元気の素の食事を作る暮らしはなかなか素敵で心弾む。
が、ふとなしくずしに男の人生に取りこまれていくような不安を感じる。
私はなぜここに居るのだろうか。
女が美しさを求めて、自分の納得のいく居場所を模索する愛の長編小説。

:::::

「会社で働き、家でも働く、なにもそんな瞬間最大風速みたいな生きかた、せんでもエエやないか。
 、、、走らんと、歩こやないか」

「うまい朝飯を食うてたら子供は非行せえへん」
なんて言葉が出現してきます。
なんとも楽しい。

私には、初めての田辺聖子作品でした。
解説の辻仁成さんも書いていらしたけれど、
「田辺さんの年齢や経験からして、この感覚を持つことの若さと新しさに驚かないわけにいかない」
私も、本を読みながらずっとそう感じていました!
現在、御年83才。
刊行日より、この本は68才頃に書かれたものになるのでしょうか。
ぜんぜん、若い作家さんの本のようなのです。

この本を読んでいると、旅館のような朝食を作って食べたくなります。
レシピにもなりそうな勢いで、お料理の様子が書かれています。
小さな男の子は、とても可愛くて。
野百合と律は、どうする、結婚する?しない?などのそんなことではなく話は進んでいきます。
そこが良いと思いました。

「きちんと生きること」と「自由に生きること」の二つを、この物語から感じました。
人と人とが同じ屋根の下、うまく生活していくためには、この二つが大切なのかも、などと。
律は、きちんとして、自由な人間でした。
強くて優しくて。
別れた奥さんも、律にとってはずっと家族なんだと。
形ではなく、もっと肝心なものはたくさんある。
物事を決めつけないことが、どんなに人をうまく運んでくれるものなのかと。

あ!曖昧な愛情を、もしかして”情”と呼ぶのでしょうか。
たった今、そんなこと思っちゃいました。
[PR]
by thurezure | 2011-08-28 16:47 | 読んだもの
<< 赤プリとコンボイショー。 つれづれと… >>